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卓上型電子顕微鏡(Table Top Microscope:TTM)でEDSがどのように発展し、今日の成功につながったかを振り返りましょう

7th  April 2022 | Author: Anthony Hyde 

卓上型電子顕微鏡(Table Top Microscope:TTM)でEDSがどのように発展し、今日の成功につながったかを振り返りましょう

2005年頃、最初の商用卓上型SEMが発売されましたが、電子顕微鏡のコミュニティからは懐疑的に迎えられました。経験豊富な電子顕微鏡技師は、倍率、分解能、試料サイズ、機能性が極端に低下したSEMに意義を見出せなかったのです。しかしこの最初のTTMは、従来のEMユーザー向けに設計されたものではなく、電子顕微鏡よりも光学顕微鏡になじみのある新しいタイプのユーザーを対象としたものでした。ハイエンドの光学顕微鏡を購入する研究室は、より大きな倍率と機能を持つシステムを求めていましたが、使い勝手を犠牲にしてはいませんでした。

TTMは、使いやすく、自己完結型で、ハイエンドの光学顕微鏡と並べることができるほど小型のものを提供することで、この要求を満たしました。TTMは、光学顕微鏡では得られない高倍率の画像と形態情報を提供することができました。その後この初期の電子顕微鏡は、2つの画像検出器(SEとBSE)と化学情報を得るためのEDS検出器を搭載するまでに成長しました。

これらのTTMユーザーは、電子顕微鏡の分野では初心者でしたが、TTMシステムが非常に使いやすいため、技術の予備知識や大規模なトレーニングは必要ありませんでした。これは試料の高さを固定し、フォーカスや明るさ・コントラストなどの信頼性の高い自動セットアップ機能を採用することで実現しました。カラムがシンプルで、試料の形状が固定されているため、複雑なカラムの位置合わせは必要ありません。そのため、ユーザーは試料を試料台に載せてTTMにセットし、”オン”ボタンを押すだけでよかったのです。するとすぐに試料の画像が表示されるのです。   

EDSのソフトウェアは、同じように「使いやすい」ものでなければならないことは明らかでした。そこで、AZtecのインターフェイスを完全に再設計する必要がありました。プロジェクト開始時に設定したデザイン目標の1つは、ユーザーが数回クリックするだけで結果を得られるようにすることでした。そのため、ナビゲーターの代わりに、画像、マップ、スペクトルの各データ収集タイプごとに自己完結型のステップを作成しました。

そうして2015年、ソフトウェアプラットフォーム「AZtecOne」が誕生したのです。

AZtecでハイエンドのお客様に高品質な結果を提供するために開発した「スマート」な機能が、AZtecOneの成功に不可欠であることは明らかでした。これらの機能により、EDSの初心者の方でも高品質な結果を得ることができるようになりました。

スペクトルの収集を検討する際、初心者がスペクトルを調べて、ピークが正しくラベル付けされているかどうかを判断することは不可能であると考えました。そこでスペクトル処理技術であるTru-Q®が、スペクトル内のすべてのピークを正しく自動的に識別するための鍵となりました。これによりユーザーは複雑な設定を行う必要がなく、結果を解釈するための高度な技術的知識も不要になりました。AZtecは、スタートボタンを押すだけで、信頼できる定量結果を瞬時に提供します。

このような高度な技術の必要性は、X線マップの誤った解釈が多いマッピングの場合に、より強く感じられました。例えば、下のようなBaとTiを含む試料を解析するとします。 すると、初心者はBaとTiの分布が同じだと勘違いしてしまうのです。しかしウインドウ積分マップはエネルギー範囲を利用してマップを生成するため、特定の元素の組み合わせが見つかった場合に問題が発生することがあります。BaとTiは、そのような組み合わせの1つです。BaとTiはピークが重なるため、その結果ウインドウ積算マップは似たような分布になります。

そこで、ピークの重複を補正し、バックグラウンド成分を除去した元素マップを生成する「TruMap」を作成しました。同じ試料でTruMapを実行すると、BaとTiの分布が全く異なることがわかります。

EDS機能を備えたTTMは大成功を収め、電子顕微鏡の新しい分野を確立しました。TTMの人気は高まり始め、顧客層の拡大とともにTTMに対する要求も大きくなっていきました。こうした要求の高まりに応えるため、画像とX線マップの解像度機能を高め、サンプルドリフト補正ソフトウェアと新しいライブケミカルイメージングステップを追加して、AZtecLiveOneという新しいソフトウェアパッケージを作りました。

画像やマップの解像度が上がったことで、ユーザーは試料の詳細な情報を得ることができ、新しいドリフト補正ソフトウェアにより、試料のドリフトを心配する必要がなくなりました。また、ライブケミカルイメージングステップの導入により、新たな機能が加わりました。ステージを停止してEDSデータを取得することなく、試料上を移動して形態と組成の両方の情報を得ることができるようになったのです。これは、光学顕微鏡とそれに付随するイメージングモードの使い方に近いと思います。

TTMの物語は今一巡し、一般のEMコミュニティに歓迎されています。大規模なEMラボでさえ、簡単な分析作業を行うため、またハイエンドの顕微鏡を使いたいユーザーのフィルターとして、EDSを搭載したTTMを導入しています。「使いやすい」AZtecOneソフトウェアも、EMユーザーに採用されました。AZtecLiveとAZtecLiveOneの両方を搭載したFEGSEMを見かけるようになり、幅広いユーザー層に対応できるようになりました。新規ユーザーはAZtecLiveOneから始めて、経験を積んだり、より多くの機能を求めるようになれば、AZtecLiveのソフトウェアを使うようになるかもしれませんね。

またTTMは学術的な教材としても活用されています。学生を顕微鏡室に押し込めて授業をするのではなく、教室に数台のTTMを設置することができるようになりました。 TTM/EDSを利用することで、第6学年生や学校でも電子顕微鏡やEDSを体験することができるようになったのです。

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Anthony Hyde


EDS Product Manager

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