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NanoAnalysis | Blog
電子機器に使用されるはんだの品質を確保するためのWDSの活用方法

17th March 2021 | Author: Dr Rosie Jones

エレクトロニクス分野では、波長分散型分光器(WDS)とAZtecWaveを製造工程に取り入れることで、大きなメリットが得られます。これは、はんだ、パッケージ材料、相互接続、コーティングなどの電子部品に存在する微量元素の濃度を正確に測定する必要があるためです。 不純物、元素の偏析、析出物の存在を特定することは、さまざまな電子部品の性能にとって非常に重要です。

WDSはエネルギー分散型X線分析 (EDS)と比較してピーク/バックグラウンド比が高いため、多くの元素で100 ppm未満の検出限界を日常的に達成することができます。 またWDSはEDSに比べてスペクトル分解能が高くなっています。 電子線マイクロプローブに搭載されているWDSスペクトロメーターと同様の設計のWaveスペクトロメーターのスペクトル分解能は、EDSの10倍以上となっています。 これにより、すべての遷移元素(Ti KβやV Kαなど)を含むすべてのオーバーラップの完全なピーク分離が可能になりました。 そのため、SEMにWDSスペクトロメーターを追加することで、分析能力と汎用性が高まり、微量元素の正確な定量が可能になります。 WDSは現在、AZtecのソフトウェアプラットフォームに統合されており、最近ではWaveスペクトロメータとAZtecWaveを使って、電子機器に使われる鉛フリーのはんだのさまざまな組成を測定しています。 ここでは、いくつかの例を簡単に紹介します。

私が最初に見た例は、スズ-アンチモン(Sn-Sb)はんだで、Snは主要な元素(約95%)、Sbはより微量な元素(約5%)です。 アンチモンは、強度を高めたり、スズの低温劣化(スズペスト)を防ぐために、はんだに添加されることが多い材料です。 そのため、はんだの特性を試験・評価するためには、正確な組成の把握が必要です。 解析上の課題は、SnとSbの特性X線のエネルギーが非常に近接しているため(例:Sn Lβ=3.662 keV、Sb Lα=3.605 keV)、EDSスペクトルでピークが重複してしまうことです(図1参照)。このようなピークの重なりは、はんだに含まれるSbの濃度を正確に定量することが難しく、特にSnに比べて低濃度(例えば5wt.%以下)の場合は、測定に高い確実性(誤差の少なさ)が求められることを意味します。場合によっては、SnとSbが分離しているように見えることもあり、またSbが微量にしか含まれていない領域もあるため、測定がさらに難しくなっています。幸いなことに、WDSの高いエネルギー分解能により、SnとSbのX線ピークを完全に分離することができました(図2参照)。

図 1. SnSbはんだから取得したEDSスペクトルで、X線のピークが重なっていることがわかります。Mini-Quantには、はんだサンプル上の1点から得られた定量的な結果で、Sb濃度が約5wt%以下の例を示しています。この例では、WDSでSbの濃度を測定し、同時にEDSでSnの濃度を測定しています。 これは、AZtecWaveソフトウェアで提供されるEDSとWDSの統合機能によって可能になります。
図 2. EDSに比べてWDSのエネルギー分解能が向上していることを示すWDSスペクトルの合成例。(ここで示されているエネルギー範囲は図1に示されているものと同等です。)

2つ目の例は、Sn-CuやSn-Ag-Cuのはんだに含まれる微量のNiを検出し、定量化することです。少量のNi(<0.5wt.%)の添加は、はんだの特性を変化させることができ、ボイド形成の減少やSnとCuの相互拡散など、いくつかの望ましい効果があります。(例えば、Zhao et al.2019) 私はAZtecWaveを使って、異なる濃度のNiを含むいくつかのSn-CuとSn-Ag-Cuのはんだを分析しました。はんだに含まれる主要な微量元素(Sn,Ag,Cu)の濃度をEDSで,さらに微量のNiの濃度をWDSで同時に測定しました。2つの結果例を以下の表に示します。これらの例では、はんだ中のNi濃度は774±122ppmと229±48ppmが測定され、WDSとAZtecWaveは、Ni濃度が800ppm未満のはんだサンプルを、最良の例では±50ppmの精度で容易に識別できることを示しています。

Sample 1
Element Signal Type Line Wt% Wt% Sigma
Ni WDS 0.0774 0.0122
Cu EDS K series 3.6503 0.0212
Ag EDS L series 4.8025 0.026
Sn EDS L series 90.5928 0.0569
Total 99.12
Sample 2
Element Signal Type Line Wt% Wt% Sigma
Ni WDS 0.0229 0.0048
Cu EDS K series 0.754 0.007
Sn EDS L series 99.1572 0.0232
Total 99.93

Ni濃度の測定に使用した分析条件は、加速電圧20kV、ビーム電流23~30nAです。 NiはLiF結晶を用いて測定し、WDSのピークとバックグラウンドのカウントタイムは、AZtecWaveの「3-way chooser」(図3参照)を用いて設定されました。この設定は、ビーム電流、取得したEDSスペクトルに基づいて予想されるサンプル中のNi濃度、目標とするwt% sigma(希望する不確かさのレベル)に基づいています。 AZtecWaveのこの新機能により、ユーザーはピークとバックグラウンドの位置をどのくらいの時間カウントするかについて、より多くの情報に基づいた判断を下すことができます。微量元素の測定では、バックグラウンドでより長くカウントすることで、結果に伴う誤差が改善されることが多いと感じています。

図 3. AZtecWaveのインターフェースのスナップショット。吸収電流の測定値、サンプル中の元素の推定wt%、目標wt% sigmaに基づいて、ピークおよびバックグラウンドのカウント時間を自動的に設定します。また、カウント時間がわかっている場合は、AZtecWaveが吸収電流の測定結果から期待できるwt% sigmaを算出します。

このブログ記事では、WDSとAZtecWaveを使って、電子機器に使用されるはんだに含まれる微量元素の識別と定量化を行う方法を紹介しました。AZtecWaveについての詳しい情報をご希望の方は、今すぐご連絡ください。

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Dr Rosie Jones
WDS Product Manager

Reference

Zhao, M., Zhang, L., Liu, Z.Q., Xiong, M.Y. and Sun, L., 2019. Structure and properties of Sn-Cu lead-free solders in electronics packaging. Science and technology of advanced materials, 20(1), pp.421-444.

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