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NanoAnalysis | Blog
EDS/EDXにおけるハードウェアコンポーネントの重要性

24th March 2021 | Author: Dr Haithem Mansour

EDSのハードウェアは、EDSシステムの中でも特に忘れられがちな部分で、ソフトウェアに比べてはるかに目立たない役割を担っています。 しかし、迅速かつ正確で信頼性の高いEDSデータを提供するためには、非常に重要な役割を担っています。 EDSにおける「ハードウェア」部分は、Silicon Drift Detector(センサー)と呼ばれることが多いのですが、それ以上のものです。このブログ記事は、EDSのハードウェア部品に関するシリーズの第1回目です。

今回は、SDDとサンプルの間にある部品についてご紹介します。

図 1. EDS検出器のフロント部分の構成図

コリメーターアセンブリ

コリメーターは、試料とEDS検出器の間にある最初の部品です。 これは検出器に到達するX線の通過を制限するためのアパーチャーです。 電子ビームで励起されている部分からのX線のみを検出し、顕微鏡の他の部分(ステージ、ポールピース、サンプルホルダー...など)で生成されたピークを解析に含まないようにする重要な役割を持っています。 そのため、コリメーターは分析部以外のピークが検出されないように慎重に設計する必要があります。 もしEDS検出器にコリメーターがなければ、Al、Fe、Zn、Cuなどの顕微鏡の他の部分から来る元素が検出されても不思議ではありません。

エレクトロントラップ

X線だけでなく、電子もコリメーターを通過し、遮断しなければSDDセンサーに到達してしまいます。 これはセンサーの放射線損傷の原因となります。 検出器に侵入した電子は、バックグラウンドのアーチファクトの原因となり、測定チェーンに負荷をかけます。 図2の黄色のスペクトルは、後方散乱電子に起因する典型的なバックグラウンドアーティファクト「こぶ」形状の例です。

図 2. BSEによるバックグラウンドノイズが発生したスペクトル(黄色)と、BSEが検出器に入射せず、X線の制動放射のみでバックグラウンドが形成されている同様の条件で収集したスペクトル(オレンジ)の比較。

エレクトロントラップ(通常は永久磁石のペアまたはアレイ)の役割は、コリメーターを通過した電子を偏向させて、検出器への入射を阻止することです。 エレクトロントラップは、電子フィルターなどの他のソリューションとは異なり、X線の透過率を低下させないため、このタスクに最適なコンポーネントです。

ウインドウ

ウインドウは、X線を可能な限り透過させながら、検出器内の真空を密封するバリアとなります。 良いウインドウは、X線透過率が高く、真空度が高く、チャンバー内の圧力変化や粒子の衝突(弾道損傷)に耐えられる機械的強度が必要となります。 EDS検出器の窓材には、ベリリウム(Be)、高性能ポリマー、窒化ケイ素などの種類があります。
Beウインドウは非常に堅牢ですが、低エネルギーのX線の吸収が大きいため、ナトリウム(Na)を含む、またはそれよりも重い元素のみを検出することができます。またBeには毒性があり、健康への影響が懸念されるため、製造時や操作時には安全対策が必要です。

高性能ポリマーや窒化ケイ素のウインドウは、Beウインドウよりも非常に薄く作ることができるため、はるかに低いエネルギーのX線に対して透過性があり、100eV程度までのX線を検出することができます。 このウインドウは薄くて自立できないため、検出器の真空状態と大気圧下の顕微鏡チャンバーの圧力差に耐えられるように、サポートグリッドに取り付けられています。

薄いウインドウは透過率が高いため、EDS検出器のBeウインドウに取って代わっています。

FEG-SEMやUHV SEM、TEMのように、より良い真空度で動作する装置では、ウインドウの無い検出器を使用することが可能で、検出器への軽元素の透過率をさらに高めることができます。 ウインドウレス検出器は、プラズマクリーニングやイオンミリングの際の保護や、顕微鏡が大気開放されても冷却されないような安全回路が必要です。

例えばウィンドウレスの Ultim Extreme 検出器は、特定の実験条件下のSEMで動作し、軽元素(Liなど)を検出するため低エネルギー感度が高く、非常に低いビームエネルギー(3kV以下)で動作し、非常に高い空間分解能(<10nm)を実現します。

このブログでは、EDS検出器におけるコリメーター、エレクトロントラップ、ウィンドウの重要性と、これらの部品がEDSの性能、データの質、信頼性に与える影響についてご紹介しましたが、いかがでしたか? お客様のご要望に合った適切なハードウェアを使用して、検出器を最適化することが不可欠です。 次の投稿では、SDDセンサー、FET、冷却システムについてご紹介します。メールマガジンに登録されると、定期的にブログの公開をお知らせします。

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Dr Haithem Mansour
X-ray Product Manager

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